シン仮面ライダーとゆらぎ

この「ゆらぎ」のある空間。
かなり昔なのですな、左官屋さんの友人から私のレンガワークを教えて欲しいと言われて何日か教えたのですが、できないということであきらめたんですよ。
公式や形式が無いからコツがつかめない、私の言ってることが理解できない、と言われました。
このことを先日のNHKドキュメントを見てて思い出しましたよ。
映画「シン仮面ライダー」の撮影ドキュメントでして。
仮面ライダーと怪人が戦うシーンの撮影。
アクションの場面は専門のアクション監督とチームがいまして、彼らが作り上げた「かっこいいアクション」を撮影したのですが
総監督の庵野秀明氏は「そんな形式ばったアクションなんかいらない!」ってすべてNGで撮影し直し。
庵野秀明氏は50年前にまだ特撮アクションなんか無かった時代に大野剣友会が手探りで試行錯誤しながら仮面ライダー1号の撮影をしていた「ぎこちない」形式の無いアクションを撮影したかったんですよ。
庵野秀明氏はアクション監督に説明するのだけど、自分からが作り上げてきたアクションの形式を全て否定されたアクション監督は凹むけど必死に庵野秀明氏の頭の中にあるアクションとはどんなものなのかを考えますが、なかなか難しい。
これも庵野秀明氏がアクションに対して「ゆらぎ」を求めているんですよ。
決められた形式は無いけれど、その空間にマッチしているもの。
これを他人に説明して理解させるというのは非常に困難。
私の場合は自分でデザインしたものを自分で作るわけですからいいのですが、映画の場合やはり自分ひとりで全部やるのは不可能ですから、どうしても苦しむ人間が出て場の雰囲気は最悪になります。
ドキュメントを見てるだけでも撮影現場はため息だらけでしたね(笑)しかし、この雰囲気に負けて庵野秀明氏が一つでも妥協したのなら、シン仮面ライダー全体が粗悪品になっていたでしょうね。